2017年5月3日水曜日

会社の老化は止められない を読了

会社の老化は止められない。 宿命にどう立ち向かうか (日経ビジネス人文庫)
細谷さんの書籍はなかなか着眼点もよくてついつい読んでしまう。
今回の書籍は割とテーマ設定が具体的な内容。

企業におけるゴーイングコンサーン神話がライフサイクルと乖離していき、老化してくというのはまさにと思った。

自分がまさにそんな新たなルールや規則追加などを行っていることもあって、企業における複雑高度化がなぜ老化に繋がるかを簡潔に説明してくれている。
やはりエントロピー増大の法則。
なかなかおすすめですよ。奥さん。

目次
第1章:会社の流れは一方向
第2章:老化した会社の「止められない」症候群
第3章:老化を加速させる大企業のジレンマ
第4章:会社の老化がイノベーターを殺す
第5章:何がパラダイムシフトを阻むのか
第6章:組織の宿命をどう乗り越えるか

細谷さんの書籍で言えば、合わせて読みたいシリーズもありますな。

具体と抽象とか
具体と抽象を読了!

問題解決のジレンマとか
問題解決のジレンマを読了!

でわでわ。

mixiからのレビューサルベージ Vol.2

## 世紀のカラ売り

元ソロモンブラザーズのマイケル・ルイスの書籍。
これは久々に改心のヒット。けっこう重厚な本ではあるが、食い入るように読んでしまった。

舞台は、金融業界を揺るがしたリーマンショックの前段階のサブプライムローン。これをめぐるセルサイド・バイサイドのノンフィクションストーリー。
(リーマンはほとんど出てこない。ベア・スターンズがかなり出る)

メインのCDS、CDOなどの金融商品については、未だにざっくりとしか理解はできていない。そもそも、オプションのようなファイナンシャル・エンジニアリングの概念を知っていなければ、全くもってついてはいけないだろう。
ここは注意が必要であるだろう。

個人的には経済小説は好きなので、よく読む。
本書は同様のワクワク感を与えてくれた。
だが、唯一違う点は、すべて現実に起こったことであるということだ。
これは大きな違いだ。事実は小説よりも奇なりとは言いえて妙だ。

マイケル・ルイスの書籍は初めてだったが、すでに他の著書はWISHリストに入っているし、確実に読もう。ファンになったのだから。

The Big Shortの後に、Too Big Too Failを読める(のつもり)は順番的によかったかな。フレディマック・ファニーメイ・AIGを主役にどんな内容なのかとても楽しみだ。

超おススメの一冊である。☆5つ。

以下、目次

序章 カジノを倒産させる
第1章 そもそもの始まり
第2章 隻眼の相場師
第3章 トリプルBをトリプルAに変える魔術
第4章 格付け機関は張り子の虎である
第5章 ブラック=ショールズ方程式の盲点
第6章 遭遇のラスヴェガス
第7章 偉大なる宝探し
第8章 長い静寂
第9章 沈没する投資銀行
第10章 ノアの方舟から洪水を観る
終章 すべては相関する

## 砂の女

知人に薦められて安部公房の作品を読んでみた。色々とあるのだが、まずは知っているところからと思い、砂の女を手にとったわけだ。

結論から言うと、知人の薦めはとても的確で、かなりのめり込んでしまった。
あらすじを記載しておこう。

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋れていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守る為に、男を穴の中に引き止めておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開の中に人間存在の象徴的姿を追求した書き下ろし長編。20数カ国語に翻訳された名作。

どうだろうか。これだけでも、かなり引き込まれる内容ではないだろうか。
解説にもあるのだが、安部公房の書きぶりがとてもミステリアスなのが読者を非日常体験に引きずり込むような気もする。

女は砂を掻き出す仕事に日々追われているし、男もそれに追随する。
日常のタスクに追われる充実さと自由とは一体何かということのメタファーなのではないだろうか。サラリーマンの疑問に通ずることでもあるだろう。
他にも彼の作品を読みたくなった。
オススメの1冊

## 空売り屋

ずっと気になっていた黒木さんの経済小説、「カラ売り屋」。

中々の厚さなので、読み応えがあるなあと思ったが、いくつかの短編小説が収録されている。

・カラ売り屋
・村おこし屋
・エマージング屋
・再生屋

上記の4つがその内容。

巻末の解説にも記述があるのだが、経済小説は作者の経歴というのは極めて重要であると思う。
黒木さんは都市銀行、証券、商社という経歴なので、まさに現場に即したディテールで内容が描かれている。

個人的には、村おこし屋がとても面白かった。
拝金主義の堀井は恐らく、ホリエモンをモチーフに描かれているだろうなぁという箇所が多々あったりする。

経済関係者でないと、専門用語等に振り回されてしまう恐れがあるという点は懸念だが、おススメの一冊である。

黒木さんの経歴は下記のとおり。
1957年、北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学修士(中東研究科)。銀行、証券会社、総合商社勤務を経て作家。2000年、国際協調融資を描いた『トップ・レフト』でデビュー。英国在住

## ライフログ入門

ライフログ入門というタイトルなので、ユーザー目線でのライフログ指南書であるだろうという先入観から入った。
まさにその通りであったが、著者は現在のデジタル機器が発展したからという理由ではなく、昔からログを残し続けていたのだという。

Evernoteやtwitterなどを始め、mixiやFacebookのようなサービスも当然ライフログの範疇に入る。
クックパッドのレシピなども記載があるのだが、これもまた然りだ。

ムーアの法則は破綻したが、情報量の爆発的な増加は留まるところをしらない。一つのストレージに収まりきらなくなったデータも並列分散処理により対応するという時代だ。
この流れは止まらないだろうし、本書の言うように、今後は意識しないでもログを取ることが可能になっていくことは間違いないだろう。

Webサービスのサプライヤーとして、この蓄積データとその活用については不可分だと確信しているので、ある程度は既知のことであったが、新たな気づきを得られてよかった。また、マイケル・ポランニー「暗黙知の次元」が触れられるとは思わなかった。
未読なので、早く読まねば。
Webサービスに関わる人ならば一読すべき。

目次
Chapter1 イントロダクション
Chapter2 ライフログの可能性
Chapter3 ライフログのある生活
Chapter4 さまざまなライフログシステム
Chapter5 ライフログで人生は変わる

## グアルディオラのサッカー哲学

今、破竹の勢いで突っ走っているバルサ。
それを率いるペップことグアルディオラについて書かれた本。

就任1年目にして6冠を達成するという、あまりにも出来すぎた結果の裏に迫る内容。

正直、彼の成功の裏の理由は、どこか訝しい思いだったのだが、本書を読んで謙虚で誠実なペップだからこそなしえたものだと確信した。

彼のバルサでの成功の要因を少しでも知りたければぜひとも本書を手に取るべきだろう。
今後の彼のチャレンジからますます目が離せない。

【目次】
プロローグ グアルディオラが監督として成功した理由

序章 グアルディオラ監督誕生
「私は決して世界で最も優れた監督ではない」
3つのリクエスト/ 監督就任会見/ 史上最高のシーズン

第1章 バルサの精神
「バルサは世界で最もカンテラが機能しているクラブである」
若き指導者/ バルサであること/ グアルディオラの解釈

第2章 グアルディオラとクライフ
「クライフが現代サッカーの基礎を作り、バルサの基礎を作った」
成功の定義/ モダンフットボールを確立した男/ グアルディオラの素顔

第3章 最高の選手に囲まれて
「私のサッカー哲学にシークレットはない」
カンテラの憧れ/ 選手たちの評価

第4章 成長の地、カンテラとマシア
「私はマシアでの生活が大好きだった」
バルサ王国の礎/ マシアで学ぶこと

第5章 グアルディオラの監督術
「すべての責任は私にあるし、その時の覚悟は当然できている」
リーダーの品格/ エル・クラシコの成功例/ エトー放出の理由/ こまやかな配慮/
士気を高める策/ 戦うための環境/ 楽観的な賢さ/ 大一番を制す

第6章 創造性を持つサッカー狂
「私の選手たちに対する信頼は不変だ」
期待が成果を生む/ 行動規範/ 守備が要の攻撃力/ ワーカホリック/ 金銭と選手の関係/ 誇りを持つ

第7章 勝利の条件
「結果と内容の両方で納得のいくサッカーをしたい」
9つの条件/ 物事を明確にする/ 平常心を保つ/ 失敗から学ぶ謙虚さ/ 相手をリスペクトする/
集中力を高める/ 何が大切かを知る/ 謙虚さを忘れない/ 感謝する

第8章 独自のリーダーシップ
「世界にはバルサの哲学を愛してくれている人々がたくさんいる」
バルサ監督の条件/ 究極の選択/ パーソナリティの鍛錬/ 必要な変化/ バルサ人として/ 幸せであること

エピローグ バルサのために生きる男

## ハーモニー

伊藤計劃という作家の著書。
しかし、すでに作者は亡くなられてしまったそうだ。
享年34歳とのことだ。

本書を知ったきっかけがどこかの書評だったのだが、どこかは思い出せない。恐らくdankogaiのとこかな。
というわけでリンクしておく。

hopelessly happy - 書評 - ハーモニー
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51560010.html

近未来の描写としては、かなり高い満足度を与えてくれた。

個人的には攻殻機動隊SSS+マトリックスのような話だったように思う。

また記述の特徴としてEtmlというマークアップ記述でなされる。これが最初は曲者でなんなのかわからなかったものだ。

話の筋は、医療経済が高度に発展した近未来、自分の体にWatchMeというソフトをインストールし、病気などが皆無となった世界で沸き起こるストーリー。

展開はSFのものだが、現在の状況を思考の補助線として捉えると、なくもない世界ではある。現在の情報爆発の先に起こる内容として、そのデータを活用していく身としては、深く考えさせられる点が多かった。

本当に満足なのだが、ウェルテルのように激昂的な箇所と、残虐な描写がちょっと堪えたので、少し減点で4つ!
でも、読んで損はない作品だと太鼓判を押せます。

## ハッカーと画家

ポール・グレアムの書籍。
なんだかんだでたどり着いた。
ポール・グレアムのエッセイは今もなお、翻訳されているので、馴染みも深い。

本書「ハッカーと画家」は200ページちょっとと薄手の本であるので
わりとさらった読めるかと思ったら、内容の重厚さに圧倒された。

痛快な語り口でハッカーについてのことやLispを崇めていくのだが、本当に面白かった。ハッカーと凡人の「差分」を取り出したので、僕はその乖離に愕然としたものだ。

人気のある言語でなく、真に重要なことはその言語の簡潔さであるというのは目から鱗。LispとPythonはやってみたいし、Javaの評価がdisられていることから興味がうせてしまったりと、色々と影響を与えてくれますね。

とりあえず、インターネット業界に携わる人は必見でしょう!!
この先もこの内容は色あせない!!

以下、目次
メイド・イン・USA―アメリカ人が車を作るのが下手なのとソフトウェアを書くのが得意なのは、同じ理由による。だがアップルの存在は、両方を改善してゆけるヒントだ。
どうしてオタクはもてないか―彼らはゲームに乗っていない。
ハッカーと画家―ハッカーは、画家や建築家や作家と同じ、ものを創る人々だ。
口にできないこと―異端的な考えを思い巡らせ、それをどう使うか。
天邪鬼の価値―ハッカーはルールを破ることで勝つ。
もうひとつの未来への道―Webベースソフトウェアは、マイクロコンピュータの登場以来最大のチャンスだ。
富の創りかた―裕福になる最良の方法は富を生み出すことだ。そしてベンチャー企業はその最良の方法だ。
格差を考える―収入の不均一な分布は、広く考えられているほど問題ではないのではないか。
スパムへの対策―最近まで、専門家の多くはスパムフィルタは成功しないと考えていた。この提案がそれを変えた。
ものつくりのセンス―素晴らしいものを創るにはどうすればよいか。
プログラミング言語入門―プログラミング言語とは何か。それはなぜ盛んに話題になるのか。
百年の言語―百年後にはどういうふうにプログラミングをしているだろう。今からでもそれを始められないだろうか。
普通のやつらの上を行け―Webベースアプリケーションでは、自分の使いたい言語を使うことができる。ライバルも同様だ。
オタク野郎の復讐―技術の分野では、「業界のベストプラクティス」は敗北へのレシピだ。
夢の言語―良いプログラミング言語とは、ハッカーがやりたいことをやれる言語だ。
デザインとリサーチ―研究は独自性が必要だ。デザインは良くならなければならない。
素晴らしきハッカー―ほかより飛び抜けて優れたプログラマがいる。そんな素晴らしいハッカーたちはどういう人物なんだろう。

## デザインの骨格

デザインの骨格。慶応の山中先生のブログをまとめた内容の本らしい。

最近、企画などを検討する際、デザインの知識が必要だと感じ、
デザインを専攻している後輩におススメを依頼して、レコメンドされたのがこの本。

プロダクトデザインで機能美について考えたいというオファーに見事に応えてくれた内容だったといえる。

優れたデザイナーは根幹部分にも関わる。
やはり分業という近代のシステムに慣れた我々にとって、この発想は目新しいもの。
でも、ジャンルは違えど、俺もこの考えに共感している。

「骨」。なんども出てくる表現。デザインを決めるのは骨であるとのこと。
人間では体幹であろう。

印象に残ったのは義肢の話。アスリートの義足の話だ。
攻殻機動隊の義体はデフォルメされた内容だが、仮に現実味を帯びるとあのようなデザインではなしえないだろうと感じた。

また、学生の指導においても、自身の手を見させるということが多いようだ。技術は見て覚えるという古来の技術伝心を思い出す。

やっぱり匠の域にいくと、そのような境地になるのだろう。

俺はインターネットにおけるデザインやコミュニケーションデザイン、その他ビジネスデザインなどにこの本の内容は役に立つだろうと思う。
本当におススメだ。
☆5つ!

目次
見ること、聞くこと、そして批判すること

第1章 アップルのデザインを解剖する
MacBook Airの解剖
幻のMac OS
スティーブ・ジョブズの台形嫌い ほか

第2章 デザインを科学する旅客機の全長と便器のサイズ
Suicaの読み取り角度はこうして決まった(1)
Suicaの読み取り角度はこうして決まった(2)
 ほか

第3章 コンセプトを形にする
ケータイの遺伝子
日産自動車を辞めた理由

第4章 スケッチから始める
4本脚のニワトリ
生き残れなかった斬新なアイデア ほか

第5章 モノ作りの現場から考える
ミニカーは実車の縮小ではない
深澤直人さんの台形 ほか

第6章 人と出会う
明和電機の土佐信道さん
チームラボの猪子寿之さん ほか

第7章 骨格を知る
便利さと美しさ
人工物の骨 ほか

第8章 人体の秘密を探る
走ること飛ぶこと
『かたちだけの愛』を読む ほか

第9章 漫画を描く、漫画を読む
漫画を世界に普及させた原動力
浦沢直樹さんの『PLUTO』 ほか

巻末付録
漫画「Hull+Halluc-II」について
漫画「Hull+Halluc-II」

## 未来の売れ筋発掘学

データマイニングに色々と思いを寄せるものがあったため、読了。
触れ込みはデータマイニングの限界の後の価値センシングについてというもの。
以下、目次。
[目次]
序章
 眠っているドラゴンの起こし方 (大澤幸生)
データマイニングの限界 ドラゴンとはビジネス界に潜む価値
 価値のある戦略的シナリオを見つける
 価値センシングとは何か
第1章
 思い出す技術~データからの気づき、気づきからのデータ
(大澤幸生・生井セバスチャン洋・吉田隆久・岩永卓也)
 「書く」ことと価値センシング
 アンケートデータを読んでみよう
 埋もれた価値に気づくメタ認知
 データ可視化の方法:キーグラフ
第2章
 「こと語る」技術~可視化でシナリオを掘り起こす
(大澤幸生・郷田慎一・前田雄佐・吉田隆久)
 メタ認知の衝撃:肩こりの消えたスイマー
 キーグラフから未来を読む
 意味は無視して「つながり」から見えるもの
 脳の動きを可視化する
 株価の連鎖的下落を「こと語る」
 矢印つきキーグラフによる株価下落連鎖構造の把握
 株価連鎖構造で語る世界不況のシナリオ
 価値センシングに終わりはない
第3章
 高め合う技術~価値をつかむコミュニケーション-
(久代紀之・西原陽子・山口広樹・大澤幸生)
 主婦たちの声からわかった「じゃがいも」の真価
 ユーザー要求を知る:製品設計のために
 顧客の声を聞く質問の技術
 顧客のさまざまな声を、一つのかたちにする
 要求仕様へまとめる
 ユーザーの要求を知るものづくりプロセスの実施例
 価値センシングで重要な、話し相手の選び方
 人間関係を可視化する
 「アホ」と呼ばれる発言から、宝を見つける
 これからの会話分析
 コラム:医療現場での実感:患者が本当に求めているものを知る技術(田中祐次)
第4章
 感じる技術~お客様の隠れた気持ちをとらえるセンサ
(田中良祐・大澤幸生・細田琢磨・木村諒史)
 「感じる」ことの難しさ
 消費者の回遊行動に潜む価値ある情報
 スーパーマーケットのお客を観察する
 感じるスキルを支えるRFIDタグ
第5章
 見えない「こと」をつくるデータ結晶化技術 (大澤幸生・前野義晴・堀江健一)
 バーベキューパーティの仕掛け人は誰?
 データ結晶化の原理:低頻度からゼロ頻度への挑戦
 メーリングリストによる実証実験
 テロリストのリーダーはどこに?
 ないものをつくる:特許明細データから新発想へ
第6章
 アナロジーゲーム~類推力を高めよう (中村 潤・大澤幸生・小林正典・前川知英)
 アナロジーゲームの遊び方
 経験知を掘り起こすアナロジーゲーム
 なぜ「脳みそに汗をかく」のか:迷いの効果
 アナロジーゲームで測る価値センシング能力
 KJ法との違い:迷いを生かす
第7章
 イノベーションゲーム~組み合わせ発想を楽しむイノベーションの世界
(大澤幸生・西原陽子・高市暁広・岡本憲介)
 ウェブ上の単語から需要予測?  イノベーションゲームの原型
 イノベーションゲーム登場:企業家vs.企業家
 ゲームに「神様」を入れてみる
 ゲームからビジネスの本質が見える
 データ結晶化でつ

結局、データマイニングの限界については言及されているんだけど、価値センシングの概念が抽象的過ぎて、ちょっと微妙。
ツールとか使う実務担当者は、そんなこと言われなくてもわかるわ!ってレベルかもしれない。
まあ、時流に乗っているので、★3つくらいで。

## 動的平衡

動的平衡の所感

福岡伸一さんの書籍。彼の一貫して主張している生物論である。
コメントを引用しよう。

私たちは、自分は自分だ、自分の身体は自分のものだ、という風に、確固たる自己の存在を信じているけれど、それは実は、思うほど確実なものではない。私たちの身体は、タンパク質、炭水化物、脂質、核酸などの分子で構成されている。しかし、それら分子はそこにずっととどまっているのでもなければ、固定されたものでもない。分子は絶え間なく動いている。間断なく分解と合成を繰り返している。休みなく出入りしている。実体として
の物質はそこにはない。一年前の私と今日の私は分子的にいうと全くの別物である。そして現在もなお入れ替わり続けている。

ここに本書の趣旨が詰まっている。

”自転車操業”という言葉がふさわしいが、人間は過去とはまったく違う分子生命体であるというこの考えは、ある意味かなりのパラダイムシフトだった。消化酵素などの話にはあまりついていけなかったのだが、ここの考えを知ることで、普段の生活における食物のとり方などを大きく考えさせてくれた。他の書籍でも大きな気づきをくれた著者には感謝したい。

目次

「青い薔薇」――はしがきにかえて

プロローグ――生命現象とは何か
ボスの憂鬱
ノーベル賞より億万長者(ビリオネラ)
生命現象とは何なのか

第1章 脳にかけられた「バイアス」
クリックが最後に挑んだテーマ
記憶物質を追求したアンガー博士
記憶とは何か
情報伝達物質ペプチドの暗号
時間どろぼうの正体
人間の脳に貼りついたバイアス
「見える人」と「見えない人」
錯覚を生むメカニズム
なぜ、学ぶことが必要なのか

第2章 汝(なんじ)とは「汝の食べた物」である
骨を調べれば食物がわかる
食物は情報を内包している
胃の中は「身体の外」
人間は考える管である
生命活動とはアミノ酸の並べ替え
コラーゲン添加食品の空虚

「頭がよくなる」食品?
チャイニーズ・レストラン・シンドローム

第3章 ダイエットの科学
ドカ食いとチビチビ食い
自然界はシグモイド・カーブ
「太ること」のメカニズム
脂肪に変換して貯蔵するプロセス
インシュリンを制御せよ!
「飢餓」こそが人類七〇〇万年の歴史
過ぎたるは及ばざるが如し

第4章 その食品を食べますか?
消費者にも責任がある
安全のコストを支払う人びと
壮大な人体実験をしている
バイオテクノロジー企業の強欲
遺伝子組み換え作物の大義名分
「青いバラ」の教訓
全体は部分の総和ではない

第5章 生命は時計仕掛けか?
生命の仕組みを解き明かす方法
タンパク質の設計図を書き換えよ
受精卵を「立ち止まらせる」方法はないか
「空気が読めない」細胞
ガン細胞とES細胞の共通点
ノックアウト・マウスの完成
「えびす丸1号」に何が起きたか
ES細胞は、再生医学の切り札か?

第6章 ヒトと病原体の戦い
うつる病気とうつらない病気
細菌学の開祖ロベルト・コッホ
種の違いとは何か
カニバリズムを忌避(きひ)する理由
「濾過性病原体」の発見
自己複製能力を持つ「物質」
種を超えるウイルス
謎の病原体
異常型プリオンタンパク質は足跡?

第7章 ミトコンドリア・ミステリー
私たちの体内にいる別の生物
フォースの源泉
一五回ボツになった論文
葉緑体も別の生物だった
「取り込まれた」ことの痕跡

第8章 生命は分子の「淀み」
デカルトの「罪」
可変的でありながらサスティナブル
「動的な平衡」とは何か
多くの失敗は何を意味するか
アンチ・アンチアンチ・エイジング
なぜ、人は渦巻きに惹かれるか

## ライ麦畑で捕まえて

J.D.サリンジャーの言わすと知れた名著。
だが、今さらながら初めて読んだ。

きっかけは攻殻機動隊 S.A.C 笑い男編のストーリーに影響されて。

ホールデンの語りは独特で、時々よくわからなくなる。
いわゆる中二病のような精神病による影響なのかはわからないが、ひどい妄想が多い主人公だなという印象。

”モラトリアム” is here といいたくなるような青春小説。

たまに見返すのも悪くないかな。という感じで☆4つで。

村上春樹の新訳もちょっと気になっている。

## 史上最強バルセロナ 世界最高の育成メソッド

バルセロナでの指導経験のあるジョアン・サルバンスというスペイン人の本。

タイトルはあくまでそのコンセプトであり、本質ではない。
個人的には、バルサもとい、クライフの哲学を説明し、その育成システムについての解説書なのだと思って読んだが、少し意外な内容だった。

たしかに、彼がスペイン時代に指導したカンテラの話は出てくる。メリダやボヤン、ジョナサン・ドスサントスなどへの指導の仕方や接し方などを詳細に記載してくれている。

これはとても参考になった。いわゆる選手に応じた指導を実践しており、日本人の画一的な指導とは対照的なものであるからだ。

ジョアンは日本の育成システムについても警鐘を鳴らしている。
これはサッカー批評始め、多くの人が問題意識を持っている。
制度はすぐには改善されないが、いずれよくなっていくだろう。

問題は、高校などでの指導者がこういった考え方に触れることができるかどうかに尽きる。
まあ、外野が騒いだところで、もう動いているんだろうという楽観な見方はしているのだが。

スカウトの日本とスペインの定義の違いはうなった。
無名からの発掘。たしかにそうである。育成を中心とした選手発掘なのだ。
これは企業の人材育成においても、同様のことが言える。
近視眼的な採用ではなく、そういった育てるということを認識したことが必要。
全てのファシリテーターはジョアンの考えに触れるべきかなと感じた良書だった。
☆4つ。

## エッジエフェクト

福岡伸一さんの書。
「エッジエフェクト(界面作用)」という知的好奇心を駆り立てられるタイトルであるが、内容は分子生物学の濃い話ではなく、他分野の人との対談集となっている。

目次
エッジエフェクト―新しい生命は、界面に立ち上がる
欠落したオスと、自己完結するメス(桐野夏生)
科学の限界(柄谷行人)
生命現象における「美」(森村泰昌)
生命とは、流れているもの(小泉今日子)
細胞の破壊と再構築(鈴木光司)
科学と哲学の融合(梅原猛)

少し意外だったのが、キョンキョンとの対話。アイドルなので、どうなのかと思ったが、かなりの博識のようです。いやはや。

あとは鈴木光司さんの見識とアクティブさに魅了されたので、彼の小説も読んでみよう。ホラー作家の印象が覆った。

梅田望夫さんが、「ウェブ進化論」で知の高速道路を提唱してから、その横のけもの道という観点をずっと頭の片隅においてきた。
本書のエッジエフェクトとは、まさにそこへの入り口である考え方ではないだろうか。

また、僕はベクトル的にものごとを捉えるとするならば、全く異なったベクトルが相見えると、その内積のスカラー値は元のそれに比例するということになる。つまりは、各分野のプロフェッショナル同士の会合はそれ相応のアウトプットを生むというわけだ。

本書はまさにそうであるなと感じさせてくれる。

やはり”動的平衡”が終始一貫して出てくるわけだが、この考えは本当に秀逸であると思う。
また、分子生物学も掘り下げよう、もとい、福岡さんの本を読もうという気にさせてくれた内容であった。
☆5つ。

## 群れのルール 群衆の叡智を賢く活用する方法

「群れのルール」
本書はナショナル・ジオグラフィックの記者、ピーター・ミラー氏の書だ。

著者からもわかるように、ビジネス書というベクトルではない。
だが、近年のソーシャルメディア等の「つながり」を理解するために、昆虫達の群れのルール・メカニズムを知るということは、大変興味深いことだ。

以下が本書の目次である。

目次
序 章 困ったときはプロに聞け
第1章 アリ:ボトムアップの「自己組織化」で難問を解く
第2章 ミツバチ:「みんなの意見」で賢い判断を下す
第3章 シロアリ:「間接的協業」で驚異の構造物を生み出す
第4章 鳥:「適応的模倣」で群れが一つの頭脳になる
第5章 バッタ:暴走した群れの悲劇
終 章 賢い群れから何を学ぶか

1章から4章までは、群れのメカニズムによる利点がメインだ。
5章のバッタだけが、群集による負のメカニズムのイメージ。
これらは大変興味深い、生命のアルゴリズムだと感じた。

アリのボトムアップアプローチやハチの群集アルゴリズム、シロアリの間接的協業、鳥の適応的模倣。これらは個々の優れた集まりではなく、そういったルールであるために集団知であるということだ。

組織論にも通ずる本書は、大変おススメだ。
☆5つ。

## 人間はガジェットじゃない

「人間はガジェットではない」

とても興味深いタイトルである。
最初は気になったがスルー。しかし、サブリミナル効果で購入。
読了したわけだが、感想は、買ってよかった!

今はムーアの法則以降のネットワーク化マンセーな時代。攻殻機動隊オリエントな俺もその一翼を担うような形である。

これはそんな人たちに対するちょっとした警鐘を鳴らしてる。

読んだ後に感じたことは、これだけ世界がつながり、並列化していることが、実は全体的な沈没化を招いてしまうリスクがあるのではないかということだ。
当然ボトムアップではわからない。
これはその後の歴史が示唆を与えてくれるだろう。

ホントに色々な気づきをくれた本書はぜひおススメしたい。
☆5つ!

目次はDan Kogaiの404 Not Foundから(http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51565930.html)

第1部 人とは何か
第1章 人の欠落
第2章 自己放棄の黙示録
第3章 ノウアスフィア=みんなの内に潜むトロール
第2部 お金はどうなるのか?
第4章 デジタル小作農の流行
第5章 街は音楽でできている
第6章 果てしなき幸運を手にするため、クラウドの支配者は自由意志を放棄する
第7章 人間的なクラウド経済の可能性
第8章 未来に至る三つの道
第3部 フラットの耐えられない薄さ
第9章 レトロポリス
第10章 デジタルな創造性はフラットな場所を避ける
第11章 総員、膜に敬礼
第4部 ビットを最大限に活用する
第12章 私は反対思考のループ
第13章 意味解析発展のありえたコース
第5部 未来の体液
第14章 安息の地(バシュラール的な幼形成熟に対する熱い想い)

## 名もなき挑戦

アジアから世界へ羽ばたいたパク・チソンの自伝。

彼のキャリアのスタートから現在のマンチェスターユナイテッドや韓国代表キャプテンにたどり着くまでの軌跡が記されている。

いくつか、抜粋しよう。



「パク・チソンはプロフェッショナルの典型のような男だ。
(中略)彼のような選手と戦うことは、すべての監督の夢だろう」
(アレックス・ファーガソン)

導入部分。

「いつでもピッチに立てるよう常に最大限の準備を続けてきたが、
チャンスは簡単には訪れなかった。
長い間待ち、ついに機会はやってきたが、
ピッチでは誰も優しいわけではなかった。
それでも信じた。
自分を完全に捨て、相手ゴールに向かって疾走する瞬間、
気がついた。世界は自分のために開かれるということを。
今、夢に向かって走っているあなたにこの本を贈ります。」

概要は下記のとおり。

まったく注目されず無名だったアジア人が、どのようにして世界的名門マンチェスターユナイテッドで活躍するに至ったのか。 身体的、環境的に不利な条件下にありながら、強豪ひしめく実力の世界でチャンスを掴みとり、夢を実現するため、パク・チソンがたどり着いた方法は「自分を捨てる」ということだった。 サッカー界はもちろん、夢の実現を切望するすべての人々に通じる、人生のチャンスを掴むための極意を、パク・チソン自身のマンチェスターUでのエピソードを軸にまとめあげた1冊。
※自分を捨てる …夢の実現へと向かっている途中で壁にぶちあたったとき、一度、過去の自分の固定観念を捨ててしまうことで、自分の中に新たな要素を吸収できるスペースが生まれ、チャンスが開けてくる。

他にも文化の違いや日本での生活などにも触れる箇所。マンチェスターの同僚たちの記述など、とても素晴らしい内容だった。
超おススメしたい一冊である。モチベーションは間違いなくあがる。
☆5つ。

## なぜ金融リスク管理はうまくいかないのか

原著者はRBSのクレジットリスク、調査部門の統括者のリカルドという人。
数式を使わず金融リスク管理の限界を明らかにするというコンセプトのもの。

大分、長い文章がずらずらと書いてあるが、基本的にはリスク、確率に触れた後、旧来のVaRやガウス分布をdisり、どうすんだよ的な論調で、最後はベイズ統計で締めるという極めてシンプルな内容だった。

内容自体にも特に目新しい物もなく、なぞった感じではあるが、改めて認識するには十分だったかな。
翻訳者が悪いのか、元々そうなのか、数式がないぶん、本当に内容が冗長になってしまい、読むのが困難を極めてところが大いに不満。

☆3つ。

■目次
第1章 本書の意義
第2章 リスクについて考える
第3章 確率について考える
第4章 意思決定
第5章 リスク管理の目的は何か
第6章 VaR:どのようにして始まったのか
第7章 表面の下をみよ:隠された問題
第8章 どのタイプの確率がリスク管理に重要か
第9章 エコノミック・キャピタル展望
第10章 代わりに何ができるのか

## 強さと脆さ

「まぐれ」、「ブラックスワン」に続く、ナシーム・ニコラス・タレブ氏の著作。

タレブの世の風刺の仕方に魅了された僕は、発売直後に購入した。
原著のタイトルが「On Robustness and Fragility」なので、強さではなく頑健性だ!みたいな議論がちょこっとあったが、中身はみんな頑健性となっているので、ご心配なく。

さて、本書はリーマンショック後にタレブが上梓したものだが、口調はいつもながら爽快。
特にVaRやガウス信奉者へのシニカルな物言いは顕在で、リーマンショック後も使用している人間への糾弾には笑った。

しかし、最終的に彼がこれで何を言いたかったのかわからなかった。
でも、前著のおかげの視点の変化とか、現状の憤慨とか、要はエッセイなんだと思ったら、しっくりきた。
そういう感じで本書を読むと面白いね。たぶん。
★4つ。

【目次】
セクションI 母なる自然に学ぶ:もっとも古い教え、もっとも賢い教え
セクションII なんで散歩するか、あるいはシステムはどうやって脆くなるか
セクションIII マルガリータース・アンテ・ポルコース
セクションIV アスペルガーと存在論的黒い白鳥
セクションV 現代哲学の歴史における(たぶん)一番役に立つ問題
セクションVI 第四象限:一番役に立つ問題の解決
セクションVII 第四象限をどうするか
セクションVIII 黒い白鳥に強い社会の原則一〇箇条
セクションIX 汝の運命を愛せ:滅ぼされないためには ザ・ブラック・スワンの逆襲:
訳者あとがきに代えて
注解
『ブラック・スワン』用語集
参考文献
索引

## 「ジャパン」はなぜ負けるのか─経済学が解明するサッカーの不条理

サイモン・クーパーとステファン・シマンスキーの共著。

南アフリカW杯の前に出版されたものだ。

サイモン・クーパーというと、ジャーナリスト精神の塊のような書のイメージだが、本書は違う。
統計的な分析も多い、とても興味深い書である。

ただし、多くの人にとっては退屈な話かもしれない。

国のGDPや人口などとの重回帰分析や観客数の解析などの話がずらり。これにぴんと来る人は読むべきだ。

日本がサッカー後進国である理由は文化であるとの帰結は間違いと真っ向から否定。
全ては統計にあり。

監督の輸入の効用にも触れている。

とても興味深い一冊。

以下メモ

移籍市場を勝ち抜く12のポイント

1、新監督は移籍に無駄に金を使う
2、「群衆の英知」を生かせ
3、W杯や欧州選手権で活躍した選手は過大評価されている。無視せよ
4、一部の国籍は過大評価される
5、ベテラン選手は過大評価される
6、CFは買うな
7、紳士はブロンドがお好き。「見た目による先入観」を捨てよ
8、20代初めが選手の買い時
9、選手の市場価値より高いオファーが来たら、迷わず売れ
10、中心選手を放出する前に代わりを用意せよ
11、私生活に悩みを抱える選手を安く買い、問題解決に向けて支えよ
12、選手のリロケーションを手助けせよ

統計が全てではないが、大いに示唆する内容であると思う。

とても面白かった。
おススメ

## 決済サービスのイノベーション―資金決済法で変わるビジネス・生まれるビジネス

資金決済法に興味があって、読んでみた。

目次
第1章 わが国における決済サービスの現状
第2章 資金決済法とは
第3章 資金決済法によりもたらされる新しいビジネス
第4章 消費者の求める資金決済サービス
第5章 資金決済ビジネスの分析
第6章 資金決済ビジネス拡大に向けた視点
第7章 資金移動インフラ機関を活用したサービスの必要性
第8章 今後のリテール決済の姿

昨年に決議された資金決済法だが、それほど世間の注目は高くない。
でも、電子マネーやネットバンキングに非常に興味のある俺にとってはホットトピックだった。
読んでみて、感想は素晴らしい!まだまだこれからの話なので、抽象的な話に終始するが、この辺のビジネスに近い者が読めば、色んなヒントが見つかるに違いない。

個人的には、システム投資の2番煎じでの中間媒体を狙っていくほうがよいかもしれない。もっと、マーケティングを科学にしたいので、推進派。

日銀は、また金融政策が機能不全に陥るようなものに直面するわけだ。

この辺、興味のある人にはぜひおススメ。

## テクニックはあるが、サッカーが下手な日本人 日本はどうして世界で勝てないのか?

FCバルセロナ スクールコーチの村松さんの著書。

少し時期が遅れてしまったが、これを手に取ったのは、日本代表の東アジア選手権での体たらくが契機である。

大きな目次
1、スペインのサッカーは何が違うのか?
2、育成に関する違い
3、FCバルセロナと日本の違い
4、戦術的ピリオダイゼーション理論とは
5、戦術的ピリオダイゼーション理論の実践方法
6、日本がワールドカップで優勝するために

こういった構成になっている。

前半部分は、日本サッカーの強化のためにスペインに渡った村松さんの経験的なところが多く、書かれている。
スペインのサッカー文化についてもあり、興味深い。

個人的には4章からの戦術的ピリオダイゼーション理論に目から鱗だった。

一言で言うと、上記の理論とは、「サッカーはカオスであり、フラクタルである」ということ。
内容についてはぜひ本著を読んでもらいたい。

本質的なサッカーへのアプローチを指摘した村松さんは素晴らしい指導者になるだろう。

彼の理論は、オシムさんの練習メニューにも通ずるところがあるので、やはり欧州のサッカーに対する理論は進んでいるのだなぁと感じた。

サッカーはサッカーをすることでしか上達しない。

日本代表の球際の競り合い、そしてゴール前での迫力不足、言われたことしかできない展開力のなさのすべてがこれに収束するのでは?と思うほどだった。

おススメ。

## 全思考

北野武のエッセイ的な書。

何気なく発見したので、読んでみることに。

---目次
一章 生死の問題
二章 教育の問題
三章 関係の問題
四章 作法の問題
五章 映画の問題

全体的に、非常に考えさせられる内容だったし、共感できた内容でもあった。
ちょいちょい出てくる武行きつけの料理屋店主のクマさんの話の挿入もなかなかいい。

映画の話など見てみると、やはり彼は理系思考な人だということだ。

銃撃戦を因数分解での捉え方という説明は面白かった。

ロジカルな考えだからこその破天荒さ。
人を笑わせたり、感動させたりするのも非常にwitに富んだ内容でなければならない。

少し彼の作品やゴダール、フェリーニの作品も見てみたいと思った。

予想外の良い内容に☆5つ。

## 「金融工学」は何をしてきたのか(日経プレミアシリーズ)

ネットの書評を見て購入。

折しも昨年のリーマンショック以降の論調=「金融工学悪者説」に納得のいっていなかった俺にとっては、非常によい本だった気がする。

日経を始め、世間の論調は「高度な技術を用いた金融工学を駆使したことで、リスクの所在をわからなくした」という主張が多かった。

でも、金融工学のモデルは複雑な数式だけど、数式なので、答えは明快じゃないかと、個人的には憤っていた。よくわからんのに、格付けの記号だけに目を奪われていたアホが多かったわけだ。

これからの金融技術はどうなるのかが疑問ではあるが、著者が言うように、日本の金融技術は素晴らしい。先日もシステムトレードのツールなどを見たのだけど、素晴らしい機能を備えていた。

やはり、未来の事象を予見するにはファクターが多すぎるのだろうか。

個人的には、今後もこの分野を深堀りしていこうと思う。
まだまだ知識が不足している。

## ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質


ブラックスワン下巻。

ようやく読み終わる。
内容的にはものすごく面白かった。

ガウス分布の存在意義を全面的に否定しているが、それを覆せる理論はないだろう。

俺は、ベル型カーブに汚染されていたけど、今ひとつその効用を信じきれていなかった。
今回、タレブの主張によって、新たな視点が開かれた気がする。

この本を読んだ後の道程は決まっている。

そして、俺はハイエク・マンデルブロの本も準備済みだ。

正直、これ関連を突き詰めると、今の仕事を考えなおす時期は近いのかもしれない。

## ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質

「まぐれ」で御馴染みのタレブの著書。

ネットでの話題で、楽しみで仕方がなかった。
中を読み進めてみると、その期待を損なわない内容だった。

今までの考え方の根底が揺らいだ、そんな一冊だったと思う。
超おススメ。

下巻も早いとこ、読もう。

mixiサルベージ vol.1

過去にmixiにあげてたレビューをこちらにサルベージしておく。

## バルセロナが最強なのは必然である


ペップ・グアルディオラの就任以降、輝かしい栄光を欲しいままにしているバルセロナ。この強さも相まって、バルセロナに関する様々な書籍が出てきたものだ。

しかし、このバルセロナの強さの本質に迫る内容という書籍には巡り会えていなかったように思える。

そんな折、本書を手に取ったところ、大変に興味をそそられる内容であった。

過去に「戦術的ピリオダイゼーション理論」を取り上げた書籍について読んだとき、フットボールの新パラダイムである複雑性に興味を持った。本書はそれをバルセロナというケーススタディに当てはめて解説をしている。
フットボールの戦術本と侮るなかれ、哲学の類いのカテゴリにも分類できるだろう。

本書を読了後、バルセロナの試合(サラゴサ戦)を観戦し、個人的にも新たなパラダイムで試合を見ることができたと感じる。
本書を読み通した結果、バルセロナが最強でなくなる理由に思いを馳せたのだが、私が思うに「飽くなき探求精神が尽きたとき」ではないかと思う。

つまりペップがこのクラブでやり尽くしたと感じるその瞬間に他ならない。相手によってやり込められなく継続が途切れるとき、そのチームは伝説的に語り継がれる。すでにその片鱗は見えているが、彼の今後とチームの進化、引き際のタイミングなど、注目せざるを得ない状況であるだろう。

大変におすすめな1冊である。

この魅惑的なチャレンジングな内容を書籍にしたオスカル・モレノ氏、それを訳す大変な作業を行った羽中田昌氏には敬意を表し、締めくくりとしたい。

■目次
Introduction バルセロナの本質に迫るために

PART1 バルセロナのフィロソフィーを解明する
CHAPTER1 古典的なパラダイム(枠組)で捉えてはいけない
1‐1 細分化しては全体像が見えない
 ▼攻撃と守備が分けられてしまっている
 ▼プレーヤーの能力を解体してはいけない
 ▼数値化することで安心してはいないだろうか
 ▼プレーだけを抽出することはできない
1‐2 代表でメッシの力を発揮させることができるのか
1‐3 従来の補完性の考え方
1‐4 ただ順守するだけの原則はいらない
1‐5 プレーヤーと監督の関係を考える
 ▼知の所有者としての監督

CHAPTER2 新たなパラダイム(枠組)がもたらすもの
2‐1 部分のさらなる先に全体像が現れる
 ▼攻撃の手段は守備とつながっている
 ▼プレーヤーは一つの機能を持ったシステム
 ▼プレーヤーを評価する基準とは?
 ▼ドラムでもピアノでもなく、ジャズを聴く
2‐2 スター選手がチームが変わると活躍できない理由
2‐3 プレーヤーたちを強く結びつけるために(新しい補完性の考え方)
2‐4 フットボールの原則から解き放たれよ
2‐5 主体となるのは監督ではなくプレーヤー
 ▼監督はチーム内の一つの駒にすぎない

CHAPTER3 バルセロナのプレーに秘められた原理
3‐1 バルセロナの全体像をつかむために
 ▼ボージャンの自然なプレー(組織化の原理)
 ▼バルセロナらしさは各プレーヤーの中にもある(ホログラムの原理)
 ▼スタメンが同じでも、同じ結果は得られない(フィードバックループの原理)
 ▼生産物であると同時に生産者である(再帰性の原理)
 ▼コインの両面を調和させる(自己組織化の原理)
 ▼個人であることと集団への帰属は分離できない(ディアロジックの原理)
 ▼アウベスが新たな手段を持ち込んだ(知の導入の原理)
 ▼すべてのピースを結びつけるチャビのプレー(差別化の原理)
 ▼セスクはアーセナルで指揮者の役割を担う
 ▼ブスケツを投入したことの意味合い(補完性の原理)
 ▼クライフの遺産に、新たな特性を加えていく(進化の可能性の原理)

PART2 バルセロナのプレーモデル
CHAPTER4 バルセロナのプレーモデルを紐解く
4‐1 バルセロナのプレーモデルとは
 ▼どのようにオーガナイズされているのか
 ▼ラインの敷き方とポジションからわかること
 ▼プレーモデルの最も重要な目的とは?

## 「空気と世間」 

演出家の鴻上尚史氏による著書。
私自身は社会学研究等には一切関係ないが、最近のソーシャルメディア
を取り巻く状況を色々と調べていたら、ここに行きついた。
本書に登場する山本七平氏や阿部謹也氏の研究にも抵触している。

内容についてではあるが、演出家のプロならではの切り口で「空気」と「世間」に対して鋭い考察を入れている。
過去の研究も引用的に引いてくるが、彼の演出の実績による空気感の理論。最近の現状に照らし合わせた社会感描写など、なかなか舌を巻く内容であった。

「世間」と「社会」の定義というくだりがあるのだが、鴻上さんは近さゆえの関心があるorなしでこれらを定義している。これをネットワーク的に言ってしまえば、ノード間の結合の有無ということになろうか。
このダブルスタンダードでの基準が大変興味深い示唆を与えてくれた。

この辺の関係をもう少し掘りたい。

目次
第1章 「空気を読め!」はなぜ無敵か?
お笑い番組の「空気」/「順番に来るいじめ」/日常というテレビ番組/
司会者がいない場の空気に怯えるな etc.
第2章 世間とは何か
席取りをするおばさんの「世間」と「社会」/ 「しようがない」の意味/
インテリが無視する「世間」/西洋にも「世間」はあった/
神と「世間」の役割は同じ etc.

第3章 「世間」と「空気」
「世間」が流動化したものが「空気」/日本人がパーティーが苦手な理由/
差別意識のない差別の道徳etc.

第4章 「空気」に対抗する方法
絶対化に対抗する相対的な視点/ 「多数決」さえ絶対化する日本人/
議論を拒否する「空気」の支配/「空気」の世界は理屈のない世界etc.

第5章 「世間」が壊れ「空気」が流行る時代
中途半端に壊れている「世間」/精神的なグローバル化/
不安と共に急速に壊れ始めた/超格差社会を生きる個人を支えるキリスト教/
空気で手に入るのは「共同体の匂い」/抑圧としての「世間」にうんざりする人々etc.

第6章 あなたを支えるもの
資本主義の「中世」化/「世間」を感じるために他者を攻撃する/
ほんの少し強い「個人」になるetc.

第7章 「社会」と出会う方法
「世間」に向けて発信した秋葉原連続通り魔事件の被告/「社会」に向かって書くということ/
「社会」と出会うための日本語/複数の共同体にゆるやかに所属するetc.

## イシューからはじめよ


少し前にだいぶはやった本。
ヤフーの方で元マッキンゼーの方が執筆されている。

やはりコンサル的思考回路で、とてもロジカルで爽快な内容。
いかに効率的に良質のアウトプットを出せるかという観点に着目した
非常に目から鱗な内容だった。

目次を紹介
はじめに 優れた知的生産に共通すること
■序章
この本の考え方―脱「犬の道」
■第1章
イシュードリブン―「解く」前に「見極める」
■第2章
仮説ドリブン(1)―イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
■第3章
仮説ドリブン(2)―ストーリーを絵コンテにする
■第4章
アウトプットドリブン―実際の分析を進める
■第5章
メッセージドリブン―「伝えるもの」をまとめる
おわりに 「毎日の小さな成功」からはじめよう

日本は戦後からいち早く復興し、sophisticatedな社会システムを醸成してきた。今、そのシステムは新興国と呼ばれる国が学び、先進国は知的労働によるバリューを出すことができるか否かで大きく左右されてくると思う。

いち早くアメリカは変化をしてきているだろうけど、まだまだ道半ば。日本は残念ながら輸出立国であるため、その辺の抜本的変化はないが、製造業の先端はこの知識集約労働による開発がなされているんだろう。

教育がそもそものシステム国家に適合できるようになっているために、いかに今後の複雑な世界に適合できるようになるかが肝なのだが、そこに対する明示的なマイルストーンは示されていない。

本書はそういった社会に対する提言と同種であるような気がする。

”イシューは何か?”に徹底的にフォーカスを当てる。

大きな問題、仮説は何か?それを起因することは大変難しくクリエイティブな作業になるが、このビジョナリー的な作業がなければ、その国の未来はない。

多くのビジネスに関わる人間が本書のようにロジカルに考え、カオスな世界へ進むべきベクトルを提示すべきだと思う。

## ゲームニクスとは何か

ゲームニクスとは何か?

最近、マーケティング界隈ではゲーミフィケーションというバズワードが出回っている。かなりの勢いだ。
これはゲーム的な仕掛けを応用することでユーザーエクスペリエンスを向上させるような取り組みなのだが、紐解いていくとゲームニクスにたどり着く。

では、ゲームニクスとは何か?

ゲームニクスとはゲームを科学することで「人を夢中にさせる」ノウハウを抽出して理論体系化したものであると、著者は定義している。

おお!これぞ、今求めるもの!ということで読了。

新書なので、大変サクっと読めます。

メモ
ゲームニクスの原則
1、直感的なユーザーインターフェース
2、マニュアルなしでルールを理解してもらう
3、はまる演出と段階的な学習効果
4、ゲームの外部化

総務省の情報大航海プロジェクトに際して、
重要なのはどれほどすばらしい検索アルゴリズムを開発し、ユーザーの行動履歴を分析して情報マッチングを行う”環境”などを整備したとしても、最終的に重要なのはユーザーインターフェースだということです。

なかなか目から鱗情報が多かったのでおすすめです。

目次
はじめに ゲームニクスとは何か
第1章 なぜ、子供は食事を忘れるほどゲームに夢中になるのか?
第2章 ゲームニクス理論―総論
第3章 “任天堂一人勝ち”から分かること
第4章 iPod、グーグル、ミクシィ…本当のヒットの理由は?
第5章 ゲームニクスが医療・福祉・教育分野を救う
第6章 ゲームニクスが日本の未来を明るくする
おわりに 日本のもてなしの文化を見直すこと

## 人はなぜ形のないものを買うか

これは完全にタイトルからジャケ買いしたもの。
奇しくも私もWebビジネスでサブスクライバモデルを検討している1人であったため、興味深く購入。

少し古い本なので、例に挙がるゲームなどの仮想空間はセカンドライフである。今であれば全盛を誇っているモバゲーやGREEなどが関わるのだろうが、まあそこは堪忍してください。

目次
第一部 デジタルコンテンツの収益モデル
第一章 デジタルコンテンツのビジネス問題
第二章 価値分析
第三章 時系列分析とタイミング

第二部 形のないものを売る仮想世界サービス
第五章 仮想世界の設計理念
第六章 オンラインゲームの事例
第七章 広告モデル

第三部 仮想世界のマネジメント
第九章 アイデンティティ
第十章 コミュニティ
第十一章 関係性の創出と公平性
第十二章 仮想世界の経済システム

結論もネタバレしちゃうのだが、最終的にはサプライヤーの提供するプラットフォームでいかにユーザー同士がつながる環境を用意できるかどうかが課金の正否を握ると結論づけられる。
今で言えば、セカンドライフ的にコミュニティを楽しめるのはアメーバピグではないだろうか。
実際やったことはないからわからないが、仕組みとしてはうまくできていると感じる。

便利だからなどの理由では続かないというのは、突き刺さるなぁ。

情報考学の橋本さんの書評もあったので、リンク。
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/12/post-893.html

ちょっと鮮度にかけるが、考えさせられる内容であったので4つ。

## 暗黙知の次元

マイケル・ポランニーの暗黙知の次元。ずっと読みたくて買ったが、途中で読みかけていたのを読了。

なかなか日本語が難しく読みにくかった。もっと読解力をあげないとなぁ‥

書評は偉大なる正剛さんと橋本さんのブログに譲る。

千夜千冊
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1042.html

情報考学
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/11/post-1112.html

まあ、これで得られたものとしては、暗黙知とはゲシュタルト的なものであり、創発によって知り得ることであるということだ。
なんのこっちゃとは思うかもしれないが、それは本書なり上の書評なりを読んでいただければわかることと思う。

思えば、仕事や技術に関する知(ナレッジ)も結局は体系化して管理ができていても、あくまでそれは在ることを知るという観点であって、決して暗黙知を共有することにはならない。
過程において発見するものなのだから。

そういう意味で特殊な仕事や技術においてはギルド性が重んじられるものだろう。

うーん。師匠見つけねばな。。

星は4つで!

## 壁

安部公房の壁。前回の砂の女同様に知人に勧められ、読破。

またもや難解な感じの小説であったなぁというのが、全体を通しての印象であった。それもそのはず、最後の解説にはフランツ・カフカと安部公房の比較云々とか書いてあって、カフカかよ!と突っ込んでしまったくらいだ。

ただ、暗さという意味では正反対なので、大丈夫らしい。
カフカは噂に聞くが未読なので、これ以上は特に触れない。

構成は短編が3章ある形である。
以下、目次

第一部 S・カルマ氏の犯罪
第二部 バベルの塔の狸
第三部 赤い繭
    赤い繭
    洪水
    魔法のチョーク
    事業

すべての物語には壁という共通の演目がある。
例えば第一部はカルマ氏の”名前”という他人と自分を分つ壁が題材となっているし、第二部では影=肉体という壁についての内容。赤い繭関係は少し違うのかもしれないが、繭はまさに体そのものだったりと、まあ、詳しくは読んでみてくださいってことで。

で、その辺の壁という認識を持ってから、エヴァンゲリオンのATフィールドも同様の扱いだよなーと思いながら読んでいた。あれは心の壁であるが、安部公房は物理的な境界である壁について、多少形而上学的に物語を形成しているあたり、読み進めていくにあたり、難しくなっていくような気がする。

読後の爽快感がないのも同氏の著作の特徴だが、不思議と次も読みたくなる。これもまた時期新たに読むと印象変わるのだろうか。
なんともいえないが、星は4つつけておきたい。

## データを未来に活かす

東京は立川市にある統計数理研究所を取材した書籍。
まあ、ジャケ買い的にタイトルを見てレジに持っていったのは
言うまでもなしか。

内容的にもそれぞれの研究者が自身の研究テーマやこれからどういうようにしていきたいかなどをかたり、日本の統計学の体系的な教育制度のなさを嘆く(言い過ぎか?)というものだった。

特に3.11後の地震のシミュレーションを行っている事例は興味深く「点過程」の統計モデルに興味がわいた。

あとは最近の研究で「データ同化」が流行しているという。これは理論モデルに実データを組み込んでいくもので、まさにベイズなんかもそうだと思うが、こちらも深堀してみたいと思った。

特にモデルの説明などなく、平易な内容なので、統計の裾野を広げる役割は十分に担える書籍ではないだろうか。
僕も応用統計家を目指せるようになりたいなー‥
とか、思ったりしている。

星は5つで!

目次
序章
統計数理研究所はデータ中心科学の中核的研究機関としての使命を果たす
第1章
医療 新しい臨床試験、治療法や診断法の開発を通して、先端医療に貢献していく
第2章
災害 地震活動の「ものさし」としてのETASモデル。着実に進む地震の予測
第3章
自然 野生生物の生きる姿をフィールドワークとデータから読み解く
第4章
情報 映像検索へのチャレンジと音声の個人性情報の抽出への取り組み
第5章
社会 日本人の国民性をより深く知るための意識の国際比較
第6章
先端数理と理論 「最適化」のニーズは世の中の至るところにある
第7章
気象 エルニーニョ現象も解析中。大いなる可能性を秘めたデータ同化という手法
第8章
健康 統計学者ではなく、応用統計家(Statistician)として

## リスクは金なり

経済小説の黒木亮さんのエッセイ集。

実は黒木さんの本は読みたいのだが、まだ「カラ売り屋」しか読めていない。

本書は彼の体験記を綴ったものであるため、彼の小説のバックボーン的な位置づけであるだろう。

僕がよく読む幸田真音は米系銀行のディーラーだった。彼女はマーケットのわずかな秒単位の表現がうまく、惹き付ける力がある。
一方黒木さんは日系の銀行でキャリアをスタートし、その後国際金融の舞台へと羽ばたいていったようだ。いわゆる投資銀行業務である。そのため、マーケットの動きよりもファイナンスの仕組みであったり、駆け引きの妙を描写するのがとてもうまいと感じている。

やはりその人のバックボーンを知ることができると、また味わいが増すというものだ。

また、黒木さんは学生時代、マラソンをやっており、箱根駅伝も2回走っているアスリートでもある。これは大変にすばらしいキャリアの持ち主であり、当時の早稲田の監督のエピソードも描かれている。
すばらしい作品には相応の裏付けがある。
そんなことを感じさせてくれた内容であった。
星4つ

目次
第1章 リスクな世界の美酒
(キルギス・コニャックエリスカお婆さんの疾走 ほか)
第2章 世界で仕事をするということ
(「サバイバル交渉術」世界標準八ヵ条
土日語学力―留学の必要なし、大声を出せ、週末を使いこなせ ほか)
第3章 人生の目標が見つかるまで
(人生の目標が見つかるまで言葉の狩人 ほか)
第4章 ロンドン金融街の小路から
(わたしが遭遇した「ネット金融」犯罪ロンドンの7・7地下鉄テロ ほか)
第5章 海外から見た日本
(地方の闇―詐欺師Xと夕張市アフリカの航空機ファイナンス ほか)

## 統計数字を読み解くセンス

統計を初歩から見直したいなーと思っていた矢先に書店で見つけた本。

目次を見ればわかるが、統計の基礎的な内容を平易に説明している。そういう意味ではとてもよかった。

しかし、もう少し深いところまで欲しかったのが正直なところ。
統計初学者が統計的感覚を身につけるためには良書。中級者以上には少し物足りなさの残る内容であるだろうか。星3.5くらいか。

以下目次
第1章
統計数字はじめの一歩――データの集計と分析
一 どんなデータがあるのだろう
二 データの分布に現れる法則
●確率をめぐる話1 二個のサイコロの目の和

第2章
平均することでなにがわかるか
一 平均とはどういうことか
二 宝くじ一枚の当選金――期待値とはなにか
●確率をめぐる話2
確率を具体化するとどういうことになるのだろうか

第3章
偏差値を正しく理解する
一 全体の中での位置を知る
二 偏差値はなにを明らかにするか
三 対数正規分布の平均値と標準偏差
●確率をめぐる話3
宝くじの番号、宝くじに当たりやすい人

第4章
データ集計のコツ
一 集計表の見方とつくり方
二 シンプソンのパラドックス
●確率をめぐる話4
誕生日のパラドックス

第5章
相関関係をどう読み取るか
一 ふたつのデータの相関をとらえる
二 性質の異なる数値をどう扱うか
●確率をめぐる話5
ロト6で出やすい数字はあるのか?

第6章
因果関係を検討する
一 相関関係と因果関係
二 見かけの相関
三 風が吹けば桶屋が儲かるか
●確率をめぐる話6
薬の有効・無効

第7章
もっともらしい結論に惑わされない――検定
一 検定とはなにか
二 違いの大きさを測る基準
三 奇妙な一致に統計学はどう答えるか
●確率をめぐる話7
野球選手の打率

第8章
全体の姿を推しはかる――推定
一 標本とはなにか
二 得られた結果をどう判断するか
三 ペンキの厚さの分布と信頼区間
●確率をめぐる話8
エレガントな調査法

第9章
統計による予測は可能か?
一 回帰 という現象
二 地球は温暖化しているか
三 予測の精度を高める方法
●確率をめぐる話9
確率を意思決定に役立てる――降水確率

第10章
健康な生活を送るための統計学
一 正常と異常の境目
●確率をめぐる話10
検査結果の確からしさ
二 安全性の判断

## 集合知の力、衆愚の罠――人と組織にとって最もすばらしいことは何か

集合知の力と衆愚の罠というソーシャル時代にふさわしいタイトルととてもよさげな装丁に惹かれて購入。

みんなの意見は案外正しいなど、Web2.0以降のインタラクティブなインターネット空間には様々な情報が転がっている。
大枠で見れば正しいのかもしれないが、なかなかそうではないケースや、そもそもカオス状態になり集約できない場合もあるだろう。

そういう見解を得たくて読んでみた。

本書を読んで思ったのが、「衆愚」について。
このワードの具体例は「空気」で語られるように、過去の日本の戦争の事例などがあげられる。山本七平の空気の研究よろしくだ。

つまり、民衆の総意は得られたが、そもそものベクトルに問題があるということである。
これは一概には言えないが、なかなか防ぐことは難しい。
そうである事実をまずは客観的に捉え、その上で慎重に対応せねばならないからだ。

最近twitterのTLで情弱やらバカ発見器だのといった発言もあるが、
こういった要素も少なからず含むだろう。

最後に、本文の一部を引用してしめよう。

"集合知とは、集団やコミュニティ内での相互作用を通じて獲得される知識や洞察のことだ。さらに掘り下げて考えるならば、そこにあるのは人と人との「生きた結びつき」であり、地域や組織や世界における「頼り合い」である"

内容よかったんだけど、読み進めにくかったので、星は4つで。

目次
序章 集合と知が変化を生む
第1章 集合知とは何か
第2章 集合知の出現を促すには
第3章 異なる世界観を生きる
第4章 集団を愚かにするもの
第5章 極性化した集団の悲劇
第6章 合意の幻想
第7章 無限の共創力
第8章 集合知を呼ぶ意識
終章 誰もが必要とされている

## ねんきん定期便活用法

一時期は騒がれたものの、最近はあまり聞かなくなった年金問題。
問題は何も解決しておらず、ただメディアが報じなくなっただけである。この国民煽動とそれに煽られる国民問題は問題だが、この本とは関係ないので、特に触れない。

そして、年金記録漏れなどから、その解決を目指して国民1人1人に対して加入記録などを伝える「ねんきん定期便」が開始された。
今なお、政治には胡散臭い権力闘争があり、官僚にも負のイメージがつきまとう。

これを主導しているのは、厚生労働省からの派生した独立行政法人である「日本年金機構」

まあ、組織とは往々に巨大になると動きにくくなるものだ。
このように切り離した方がよいというのは、官僚の優れた洞察によるものではないだろうか。

本書を読み、届けられるねんきん定期便の役割などは理解できた。

記載にもあるが、目に見えないことに対する不安があることで、国民は煽動される。じゃあ、可視化すればいいではないか。
このように加入履歴に基づいて、自身の年金額まで出してくれているのだから。

本書執筆の時点ではないが、現在、年金ネットという形でこのねんきん定期便はネット化されている。
http://www.nenkin.go.jp/n_net/
20歳以上のすべての国民が対象である。
ぜひIDを取得してほしい。

だが、年金がわかるだけでは不十分。
それを日常のお金管理と結びつける必要がある。

マネールックというお金管理サービスがある。
https://www.moneylook.jp/
こちらでは、銀行や証券などかなりの金融サービスが管理できる優れもの。こちらで前述のねんきんネットも管理が可能だ。

国民の金融リテラシー教育の欠如は問題となっているが、未だ解決策どころか方向性すら出せていない状況。
1人1人が意識改革をすることでしか、もはや状況は脱せない。
自主自律。これが大切である。

本書は年金に興味のある方には大変おすすめです。

## カモメになったペンギン

カモメになったペンギン。
はて、なんのこっちゃとは思ったが、ジョン・P・コッターのビジネス本だった。ビジネスあるあるを寓話形式にしたものだという。

帯には「変わらなければ生き残れない」
と、書いてある。うーん。気になるってことで購入。

とあるペンギン界の話。
ペンギンのフレッドはふとした時に自分たちの住む氷が溶けかかっていることを発見する。
それを仲間に報告し、対策を打っていくのだが‥
という感じの内容。

まあ、フィクションなので強引な部分もあるが、日常の会社生活においても共起性があり、とても面白かった。

さらっと読めるので、ちょっとした息抜きにおすすめ。

目次
日本の読者へ ~ジョン・コッター
序文 ~スペンサー・ジョンソン
ようこそ
カモメになったペンギン
自分を変えて、成功を収めよう
変革を成功させる八段階のプロセス
考え方と感じ方の役割
訳者あとがき ~藤原和博

## アイデアの作り方

とても薄い本だが、一時期の流行と帯の文字に惹かれて購入。
帯には、「60分で読めるけれど一生あなたを離さない本」と記載。

はてさて、どんな内容かなと期待した。

目次

・この考察をはじめたいきさつ
・経験による公式
・パレートの学説
・心を訓練すること
・既存の要素を組み合わせること
・アイデアは新しい組み合わせである
・心の消化過程
・つねにそれを考えていること
・最後の段階
・二、三の追記

この本の趣旨は単純明快。アイデアの作り方は再現性があることを述べている。
そしてその手法は下記の通り。

1、資料集め (当面の課題のための資料と一般的知識の貯蔵による資料)
2、それら情報の咀嚼
3、孵化。意識の外での組み合わせ
4、アイデア誕生(ユーレカ!)
5、現実への適用のためのアイデアの具体化と展開

これだけのことだ。
しかし、列挙の内容だけみても、ふーん程度だと思う。
おそらく無意識でみんな行っているからだ。

しかし、ヤングの説明と竹内さんの解説を読むことで、その理論への肉付けがなされる。
たしかに帯の内容も言い得て妙な感もあったわけだ。

読みやすいしおすすめ。

## 岡田武史というリーダー

昨年2010年南アフリカW杯で想定以上の成績を収めた岡田ジャパン。
その岡田監督のマネジメントに着目した本書。
フットボールにマネジメント要素を強く感じる私はタイトルを見た瞬間に読むことが決まっていた。

最初に目次を列挙しよう。

はじめに
第1章 決断のマネジメント
第1節 ワールドカップ終戦と岡田武史  
第2節 大転換こそ「決断」の原理
第3節 岡田と「決断」の密接な関係  
第4節 「決断」したら振り返らない
第5節 「決断」がもたらした勝利  
第6節 「決断」と情報収集
第7節 「理想」と「現実」の2つを描く岡田の原点

第2章 手配のマネジメント
第1節 最善の「手配」は正しい想定から  
第2節 ベースキャンプ地選びという「手配」
第3節 想定がズバリ当たった高地対策  
第4節 「点」でなく「線」で見る必要性
第5節  勇気ある敗北 を求めて  
第6節 なぜ、目標を「ベスト4」に置いたのか

第3章 構築のマネジメント
第1節 「縦」よりも大事な、強固な「横」  
第2節 チームに川口能活が必要だった理由
第3節 「コンセプト」と「フィロソフィー」  
第4節 勝負は細部に宿る
第5節 「構築」に欠かせないミーティング
第4章 岡田武史というリーダーとは
おわりに

本書の執筆者はずっと岡田さんを追っかけてきた二宮さんという方だ。
彼のマリノス時代の功績についてはそれほど知らないので、なんとも品評しがたいが、代表でのキャリアは知っているし、彼のWOWOWでの解説を聞いていても、フットボールへの深い理解と洞察を感じることはできていた。

ただ、著者も書いてあったように大会前の岡田ジャパンへの悲観的な見方はたしかにあった。
オシムの掲げた日本サッカーという理想を追い求めたが、最後の決断で今回の結果を生み出しているわけだから。
しかし、理想は間違っていなかったことは本大会にデルボスケのスペインが勝利したことで証明されている。

可能な限りチャレンジをした結果であっただろう。

話は少し変わるが、僕は2006年の失敗を悔しく思っていた。
金子達人さんの敗戦とに綴られていることを事後に知ったことも影響している。

今回の南アフリカ成功の裏には岡田さんの周りのJFAのスタッフ全員のリベンジの結果だったのではないだろうかと推測する。
平田さんも著書でマッチメークの難しさなどを書いていた。

とにかく、サッカー好きだけでなくビジネスマンも大いに読むべき本書はもちろん☆5つである!

## コンピューターが仕事を奪う

タイトルからして、PCを駆使する我々のような人間には必須のものと感じ、読了した。

趣旨は大きく異なるが、ホワイトカラーの仕事が外部要因によってなくなるというのは「フラット化する世界」で経験しているが、本書も同様にホワイトカラーの仕事が消えていくことを提言している。

フリードマンは世界がインターネットによって情報コストが格段に安くなることで世界の仕事の同質性を説いた。

本書で著書の新井さんは、「ムーアの法則」で格段に進化したPCハードウェアにより、処理能力が向上したことで、従来のホワイトカラーの仕事が消えていく提言をされている。
効率化というと、最近ではあまり好ましく思われないが、これは確実に浸透していくだろう。

機械学習、パターン認識などの帰納的アプローチはもはや人間の出る幕はない。(ちょっと言いすぎ?)
しかし、そもそもの用件定義などの方向性を定義付けることなどはできないことなので、人間のバリューはそちらで発揮すべきだろう。
良書なので、☆4つ

以下、目次
はじめに―消えていく人間の仕事
第1章 コンピュータに仕事をさせるには
第2章 人間に追いつくコンピュータ
第3章 数学が文明を築いた
第4章 数学で読み解く未来
第5章 私たちは何を学ぶべきか
おわりに―計算とともに生きる

## 読書について

ショウペン・ハウエルによる読書について。

とてもシンプルで薄い本だが、昔から読まれているもので、内容は重厚。

目次はこの3つ。

思索について
著作と文体
読書について

哲学者らしく思索から始まり、書を記すこと、そして書を読むことの3本立てである。

なんか読んでいるうちに説教されてる気分になった。

ごもっともだし、そうだなーと。
思索しろ。きちんと書け。適当な解釈入れるな。とにかく読むだけなんてバカだ…
なんか、こんなんばっかwww

でも、色々と考えさせられたので、とてもよかった。
たしかにインプットばかりだったので、再考しよう。

## アンチドロップアウト

財前宣之、石川直宏、小澤英明、阿部祐大朗、廣山望、佐藤由紀彦、
金古聖司、藤田俊哉、茂庭照幸、李忠成。
いずれもかつて日の丸を背負い、将来を嘱望されたJリーガーたち。
ある者は馴れ親しんだチームをリストラされて下部リーグに新天地を求め、ある者は踏みとどまって再起を期した。
サッカー選手にとって「成功」とは何か。
明日の保証もないサッカー人生だが、彼らはけっしてあきらめず、
燃え尽きず、現役を続行する。

こういった紹介文だ。

正直、選手のネームを見ただけではそれほど読書欲は沸かなかったのは事実である。ナオやチュンソン、茂庭の話はどうかなーくらいの気持ちだった。

しかし、内容を読むと、むしろ初めて聞く選手の方が、引き込まれるストーリーだった。
財前は中田と同時期の選手で才能はピカイチ。しかし、怪我になかされる。才能ある若手の道で成功者は欧州に移籍などしているが、かつて嘱望されたフットボーラーには様々な苦悩があるんだと思い知らされた。

僕らはサラリーマンだから、必ずしもこのようなドラスティックな状況というのは経験することは少ない。
でも、金をもらってプロとしてやる以上、彼らのような気がいや境遇というのはとても参考になるし、見習うべきだ。

僕はこの本を全てのビジネスマンに読んで欲しいと思う。
とてもよい内容だった。

## 35歳までに読む仕事のキャリア

My News Japanという就職・雇用のサイトの運営者の著書。

twitter上でちょこちょことげのある意見なんかを目にしていて、なかなか面白そうな人だと思っていた。
偶然、古本屋で見つけたので、手に取ったというわけだ。
ま、キャリアについては悩んでいる最中である。

目次
第1章 なぜ今、キャリア論なのか
第2章 年齢別の新しい俯瞰図
第3章 「ポスト戦後」のキャリアモデル
第4章 動機を顕在化するには
第5章 能力を開発するには
第6章 望む仕事内容に就くには
第7章 国がやるべきこと

内容としては、現在の日本の就職環境・雇用環境を論じながら、今までのキャリアの変遷事例の成功例を紹介していくというもの。

大事なことは金などより、自分のやりたいこと、つまり内発的動機によるものだという。
これは本当にその通りである。

本書を通じてうならされる部分も大変多くあった。
しかし、同時に結局はキャリアの終着点は大手企業に行き着くことが多い。(事例では)

時代はたゆまず流れているものだし、彼の主張ももっともなので一読の価値はある。とりあえず、20代のポテンシャルは予想以上に高いということを学んだ。

## キャピタリズム

あのマイケル・ムーアがサブプライムなどで、大パニックに陥ったあの金融危機にメスを入れる痛快な話。
見ていて、本当に共感する部分が多かったし、こういった闘う映画監督は大好きだ。

サブプライムローンの不履行による強制執行のドキュメントや、金融機関への取材。時には犯罪者呼ばわりするムーア監督の行動力や取材力に改めて舌を巻いたと言わざるを得ない。

華氏911の時もそうだったが、ブッシュ政権への彼のメスの入れ方には半端ではない意気込みを感じる。
そして、ヘンリー・ポールソンをはじめとするゴールドマン・サックスへの対応も秀逸だった。

デリバティブによって金融機関みんなが得をしたわけではないので、過剰な表現であるとは思うが、一部の富裕層、CEO連中は本当に儲けていたと思う。
政府による救済支援金の使途不明は知らなかった。

下院で否決されたのは知っていたが、当時は疑問だった。
でも、こういった理由があったんだな。目から鱗だった。

この映画はみんなに見て欲しい。特に金融関係の人間は必須だろう。

文句なく星5つ。

ページビューの合計